冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
「な、なんですか、もうっ」

内心頭を抱えたい状況の中で慌てて言い返すと、「無防備すぎる令嬢を躾けてる。いや、お仕置きか?」なんて、悪びれもなく彼は言い放った。

「男は狼だと知らないままだと、どこかで他人に攫われるかもしれないだろう? そうなってからじゃ、躾ようにも遅いからな。 ――君は、俺の妻なのに」

君が他の男に奪われでもしたら、とてもじゃないが堪えられそうにないんだ。
唐突に甘さを含んだ低い声音で耳元で囁かれ、驚きで体がぴくりと跳ねる。

「このまま、抱かれると思ったか?」

「へ?」

衝撃的な単語に、思わず絶句する。

「心外だな。俺は体調不良な君を抱くほど狼じゃない。まあ、君が今すぐにでも抱かれたいと言うのなら話は別だが」

『抱く』って、いわゆる、その、か、かか、体を重ねるって意味だよね?
じゃあ、さっきから宗鷹さんが言っている、私が『誘う』って……ええええっ!?

「そんなの一生、絶対ありえませんっ」

そう告げると、彼はわずかに目を見張る。
そして、長い睫毛に覆われた二重瞼を一瞬だけ切な気に細めたあと、何かを堪えるかのような色をわずかに浮かべて、「それもそうだな」と呟いた。
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