冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
宗鷹さんはその後も何度か部屋を訪れて、「気分はどうだ」と少し心配気味に私の表情を窺っては、暖かい飲み物を差し入れてくれた。

再び体調不良になっていないか、隈の酷い私がちゃんと眠れているかを確認しに来てくれているのだろうが、いつからか眠れるまでに随分時間がかかる体になってしまったせいで、案の定なかなか寝付けない。

しかも他人の家の見知らぬベッド、それも宗鷹さんが普段使っているベッドなら、なおさらだ。
羞恥心と緊張感も相まって目が冴えてしまって、何度も寝返りを打ちながら過ごす始末。

きっと会社から持ち帰った仕事や、彼だって一人暮らしなのだからしなければならぬ家事などあったろうに……。
私のせいで時間を取らせてしまって、大変申し訳ない。

彼に迷惑をかけたくないからと言って、約一時間ほどの間隔で部屋の扉が静かにノックされるのを寝たふりで無視するのも、なんだか罪悪感を抱いてしまってできそうにない。

「ありがとうございます。あの、もう大丈夫ですので、どうかお気遣いなく」

なので、私など気にせずにと伝えてみたが、彼はきゅっと眉根を寄せて不安そうな顔をする。
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