冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
心の中に芽生えた蕾が、ゆっくりと膨らんでいくのがわかる。
私は一度睫毛が震える目を伏せる。それから、意を決して両手をこちらへ差し出した。

「お願い、します」

「……っ」

すると、先ほどの穏やかな様子とは一転。
ぐっと苦しげに眉を寄せた彼は、性急な様子で私を強引に抱きしめ、逃さないとでもいうかのように、逞しい腕に閉じ込めた。

その勢いをころせず、私のやわらかな胸が彼の鍛え抜かれた胸板に当たって、たゆんと形を変える。
いつもならきっと何も感じないはずなのに、彼から借りているパーカーに双丘の頂きが擦れただけで、びりびりと甘い痺れが背筋を駆け上がっていく。

「ふ、ぁ」

その未知なる感覚に、驚きで半開きになっていた唇からたまらず変な声が出てしまった。
心臓がドキドキとしてうるさい。

こ、こんなので、本当にオキシトシンが分泌されるの……?
それよりも、むしろ緊張しちゃって、それどころじゃないっ。
どうしよう……私の体がなんだかおかしいこと、宗鷹さんにはバレてないよね?
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