冷徹御曹司は初心な令嬢を政略結婚に堕とす
ぐちゃぐちゃになりそうな頭を振り払い、ゆっくりと彼女を解放すると、俺は労わるように彼女を抱きしめる。
彼女に深い睡眠をもたらすために抱きしめるだけだったはずが、彼女を……抱こうとするなんて。
酷い後悔と懺悔に苛まれて冷静になった頭脳は、己を律するように彼女を見つめる。
少しでも加減せずに触れると折れてしまいそうな華奢なこの体は、二年以上もの間、途轍もない重責と決定権を背負い、今にも押し潰される寸前だったのだ。
だからこそ……この政略結婚に、彼女からの愛はいらない。
櫻衣澪は、菊永宗鷹が〝庇護〟すべき女性だ。
己の中に滾る独占欲や、愛欲をごちゃ混ぜにした激情をぶつけて、愛を乞うてはいけない。
彼女が誰かのものになるのは許さないが、その心で純粋に誰かを想う自由まで、奪ってはいけない。
彼女が健やかに暮らせるよう取り計らい、幸せな笑顔を絶やさせぬように慈しむ。
……それが、俺を俺としてくれた櫻衣家への恩返しになるのだから。
彼女に深い睡眠をもたらすために抱きしめるだけだったはずが、彼女を……抱こうとするなんて。
酷い後悔と懺悔に苛まれて冷静になった頭脳は、己を律するように彼女を見つめる。
少しでも加減せずに触れると折れてしまいそうな華奢なこの体は、二年以上もの間、途轍もない重責と決定権を背負い、今にも押し潰される寸前だったのだ。
だからこそ……この政略結婚に、彼女からの愛はいらない。
櫻衣澪は、菊永宗鷹が〝庇護〟すべき女性だ。
己の中に滾る独占欲や、愛欲をごちゃ混ぜにした激情をぶつけて、愛を乞うてはいけない。
彼女が誰かのものになるのは許さないが、その心で純粋に誰かを想う自由まで、奪ってはいけない。
彼女が健やかに暮らせるよう取り計らい、幸せな笑顔を絶やさせぬように慈しむ。
……それが、俺を俺としてくれた櫻衣家への恩返しになるのだから。