僕だけにナデナデさせて アミュ恋 3曲目

 ごちゃ混ぜの感情に
 胸が締め付けられていると、
 石段を上ってきた人の傘が見えた。



 春輝くん?

 そう思ったけど、全然違う人。



 長靴からカッパ、傘まで
 全身黒ずくめの男の人。



 紫がかった髪は
 左右非対称でワイルドで。

 前髪と左の横髪は
 クルクルとねじってピンでとめてある。


 春輝くんと違って
 背が高くて、肩幅もある。



 帰ろう……

 そう思って傘を広げようとした時



「お前がウサギ?」



 不愛想な低い声が耳に届き
 私は慌てて傘を下ろした。



「え……と……」


「違うわけ?」


「違わない……ような……」



 鋭い瞳と威圧的な声に
 おどおどしてしまう私。



「春なら、来ねえからな」


「え?」


「それ、伝えに来ただけだから」


「あ……ありがとうございます」



 その人は
 私にぶつけるように言葉を吐き捨てると

 私に背を向け、帰っていった。
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