ボーダーライン。Neo【中】
そんな見ず知らずの女性があたしの恋愛遍歴など知るはずが無いのに、ギクリと心臓が縮み上がった。
逃がした魚を檜だと考えて、その意味を吟味するが、ちょっと違うな、と思った。
大きな魚だと知っていてリリースした。これが正しい。
そう考えている内に、慎ちゃんからメールが届いた。
今日は慎ちゃんもお休みなのだが、仕事の別件で午前中を留守にしていた。それが今終わったから、待ち合わせをしようというメールだった。
午後からは予約している式場で、ウェディングプランナーさんとの、打ち合わせがある。
あたしはメールの返事を送り、雑誌を棚に戻した。
帰りの電車が最寄駅に到着し、あたしと慎ちゃんはホームへと降り立った。
「サチが打ち合わせ中にボーっとするなんてらしく無いじゃん? なんかあった?」
「え?」
駅の改札を抜けた所で、さっきの失態を挙げられてドキリとする。
「何かって、なにが?」
慎ちゃんは呆れてフッと笑った。
「あのなぁ。それを俺が訊いてるんだろう?」
あたしは暫し口を噤み、ええ、そうね、と髪を触る。
結局のところ、女性のウェディングプランナーさんとの打ち合わせの最中に、あたしはぼぅっとしてしまい、彼女の問い掛けを何度か聞き逃してしまった。
普段ならこんなミスはしないのに、上の空でいた自分を恥ずかしく思った。