ボーダーライン。Neo【中】

 複雑な気持ちでペンを止める。

 慎ちゃんと結婚する未来を、ちゃんと思い描こうと思うのに、何故かうまくいかない。

 完全なるマリッジブルーだな、と。重い吐息をもらした。

 慎ちゃんはとても優しくて穏やかで、彼と結婚したらきっといい家庭を築ける、そう頭では分かっているのに、心が息切れを起こして追いつかない。

 また一つため息を落として、日記帳を元の箱の中へ仕舞った。

 日記に書いた最後の文面、どうしたらいいか、なんて。

 そんなの誰にも分からない。それこそ、未来のあたしに訊かなければ答えなんて見つからない。





「逃がした魚は大きかったってまさにこの事だよねー」

 隣りに並んだ女の人の声で、ハッと我に帰る。

 今日は仕事がお休みの日で、丁度本屋で立ち読みをしていた所だ。

 好きな雑誌から目を上げ、声の主をそっと見やる。

 若いOL風の女性が二人、ファッション誌に載ったコラムか何かを読んで話し合っていた。

 本の中の話か、と一旦安堵して、また雑誌に目を落とす。

 しかしながら、さっきの一言が頭の中にこびりついていて、全く内容が頭に入らない。

 一瞬、あたしの事を言われたのかと思ってしまった。
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