ボーダーライン。Neo【中】
大体何であんな子が檜の近くに居るんだろう?
檜も檜だ。あたし達の付き合いは内緒のはずなのに、何であの子に相談したりするの?
あたし達の将来は二人で話し合って決めるものなのに、何で実家に行った事も黙ってたの?
何で嘘ついて早退してたの?
親に反対されて、あたしの事。嫌になった?
だから上河さんに気持ちが傾いたの?
目の奥がジワリと熱くなった。徐々に視界が霞んで見え辛くなる。
ーーでも。よくよく考えたら、そうだよね。あの子は社長の姪だから、あの子と付き合う方が立場的にも楽だし、何より若くて綺麗だし。
教師なんて、面倒くさい肩書きよりよっぽど良い。
手の中に包んだカップに一粒二粒と、雫が落ちた。紅茶の波紋をぼんやりと見つめ、どす黒い感情が芽生える。
ーー何であんな子が居るんだろう。いっそのこと、居なくなってくれれば良いのに。
波紋の消えたハーブティーに、醜い自分の顔が映っていた。
あたし。いつからこんな嫌な女になったんだろう?
親に反対されて、あの子からも別れを強要されて、美波にも相談出来ない。
だからと言って、檜に現状を打ち明けるのも怖い。上河さんに気持ちがぐらついている檜に、沢山の“何で”を確かめるのが怖い。
それこそ、面倒くさい女だと思われ兼ねない。