イジメのカミサマ
見ると、どうやら理科準備室に誰かが閉じ込められているらしい。

私は迷った挙句、扉に駆け寄って思いきり体当たりした。

今度こそ過去の自分を助けられれば、何かが変わるかもしれない。

だけど、扉はしっかりと施錠されていてビクともしなかった。その間にも、扉を叩く音は激しさを増していく。

早くしないとまた取り返しがつかないことになる。その時、私はあることに気付いてポケットに手を突っ込んだ。

……あった。一番最初の教室で、あのカエルの体内から取り出したカギだ。

私はそのカギを鍵穴に差し込むと、ガチャッと音を立ててロックが外れる。やった、あのカエルは死んでも尚親切だったのだ。私はカエルに感謝しながら急いで扉を開き――

でもそこにはもう、私の命はどこにもなかった。

私は扉の前で倒れている自分自身と、手にしている毒性の薬品の入った瓶を交互に見つめる。

私の死に顔は安らかだった。もはや、こうなることが定めなのだと受け入れているような――

「……ごめんね」



私はそう言って、顔にかかる乱れた髪を整えてあげた。自分でも言うのもなんだけど、確かに彼女の髪はとても綺麗だと思う。あの子に激しく嫉妬されても仕方ないくらいに。

死ぬ前に血を吐いたらしく、彼女はそれを使って床に『1』と書き残していた。

もうそれを見ても何も思う気力がない。私は静かに手を合わせてから、理科準備室を後にして昇降口まで降りた。



私がいじめにあっていたこと。そして過去の私の死が避けられないこと。この二つを知った以上、もうここにいても仕方ない気がしたから。
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