ビッチは夜を蹴り飛ばす。
「………い、れて」
「どこに?」
「ん、なっ!」
「ちゃんと言わなきゃわかんないから」
どこに、って膝立ちになった硯くんが迫真の演技ですっとぼけるから、仰向けで既に焦らされ倒したあたしは震えながら、泣きながら、ぐっと唇を噛み締めて声を振り絞る。
「………っあたし、のここ、に、」
「なにを」
「、…っ」
「めい」
「………硯くん、の、うぁっ、!」
一思いに貫かれてぁ、うぁ、って我慢も出来ずに弓なりに反る。声を張り上げてかろうじて少し顎を引いたら綺麗な顔が唇に人差し指を添えていて、ふるふる、って顔を左右に振ったらまた激しく突かれて良すぎておかしくて変になる。
「ぁ、ぁっ、もうやだ、んっ…ぁっ、さっき届かなかったとこおく、っあたってる、」
「ここね」
「ひっ、ぁっ!」
「…いっつも思うんだけどおれの動きに合わせて鳴が翻弄されんのほんとえろいんだよな」
視覚的にやばい、ってゾッとするような綺麗な顔が熱を持って歪むのだってそんなのしてるんだから当たり前のことなのに、たぶんあたししか知らないからそんなめちゃくちゃなこと言えるんだ。
そのまま奔放な動きに振り回されて口に指を入れられながら8回目の到達を果たしたら、やっと一度いった硯くんがあたしの胸元に両手を置いて、その上に顎を置いた。
妖艶な猫目が爛々と輝いていて、赤い唇はごきげんさんで弧を描いている。
…これは…これは、明らかにかわいこぶって、いる。
てかなんなのそのえろときゅんの使いこなし方は。人のことどれだけ悩殺すれば気が済むんだ。
さっきまで人のこと殺しそうに見下ろしてた目が命令は? って軽く細まるから、それにしぶしぶ「…ちゅーして」って伝えたらほんとに掠めるだけのフレンチなキスをされてころん、とあたしの胸を枕にする。おい。そこで休むんじゃねえ。
でもさりげなく横から手のひらで形を確かめてて、中途半端に事後の名残りで感じながら片目を閉じてはぁ、ってぬるい息を吐く。
「…っん、すずりく…どいてよ、あたしぐちゃぐちゃだからシャワーしたい、」
「もう入んなきゃいいじゃん」
「やだよ! …っぁ、硯くんってば!」
「また感じてんのかよビッチ」
「ふぐう…!」
人の上でまた甘えた様子で「次は?」って聞いてきて結局何一つ反省してない硯くんが定時に帰ってくることは今までにも増してなくなったし、そんな日は決まって罰向けていーよ、って愉しそうに笑うから、そんな硯くんを相手取るのは難しいし、
このひとの攻略にはまだまだ時間がかかりそうだ。