裏切り姫と恋の病






数十分前。

放課後、家には帰らず、私は決まって"その"場所に足を進める。


その場所は、家にもどこにも居場所がない者が集まる、溜まり場だ。


溜まり場といっても、特定の仲間しか入れない暴走族の倉庫。



その倉庫に、私は住んでると言っても過言ではないくらい。
学校にいる時以外は、ここに居る。


レディースじゃあるまいし、私は暴走族の一員なんかじゃない。


だけど、なんで暴走族の倉庫なんかに
喧嘩もできない弱い女の私がいるかというと。


小さい頃から父親から虐待(ぎゃくたい)を受けていた私は。

一年前、ベランダから見た月があまりにも綺麗で、その光をただひたすら見ていると。

頭の中のなにかが、プツンと切れる音がした。


父親が寝ている(すき)に、古びたアパートから飛び出して。


道に宿ったネオンの光を蹴りながら。夜の街をブラついていた。



< 2 / 82 >

この作品をシェア

pagetop