裏切り姫と恋の病
数十分前。
放課後、家には帰らず、私は決まって"その"場所に足を進める。
その場所は、家にもどこにも居場所がない者が集まる、溜まり場だ。
溜まり場といっても、特定の仲間しか入れない暴走族の倉庫。
その倉庫に、私は住んでると言っても過言ではないくらい。
学校にいる時以外は、ここに居る。
レディースじゃあるまいし、私は暴走族の一員なんかじゃない。
だけど、なんで暴走族の倉庫なんかに
喧嘩もできない弱い女の私がいるかというと。
小さい頃から父親から虐待を受けていた私は。
一年前、ベランダから見た月があまりにも綺麗で、その光をただひたすら見ていると。
頭の中のなにかが、プツンと切れる音がした。
父親が寝ている隙に、古びたアパートから飛び出して。
道に宿ったネオンの光を蹴りながら。夜の街をブラついていた。