ボーダーライン。Neo【下】
◇ ♀
リビングのソファーに腰掛けながら、あたしはそれを読んでいた。
「……美波」
目に涙を溜め、一週間前の電話を思い出す。
この記事を書くために、水城さんの連絡先を教えて欲しいと言ったんだな、と思うと、胸が熱くなった。
週刊誌の中で取り上げられた過去の出来事は、今でも鮮明に思い出せる。
体育館で急遽執り行われた臨時集会。
あの時は壇上に上がった檜を見て、あれ以上の騒動を想像し、不安が広がった。
けれど、あの演説があったから、檜が周りに与える影響力や才能を理解した。再び、心が揺れるのも感じた。
あたしは週刊誌を閉じると、それを手前のテーブルに置き、ガラスコップにいれたお茶をグイと飲み干した。
その時、ガチャンと扉が開き、何気なく戸口に目を向ける。
リビングへと顔を覗かせたのは、母だ。
浮かない表情で頬に手を当て、ため息をついている。
ーー何だろう? 何かあったのかな?
母は手に持っていた電話の子機を、入ってすぐにある三段ボックスの上に置き、「まただわ……」と頼りなく呟いた。
「お母さん、どうしたの?」
斜向かいへと腰掛けた母に訊ねるが、母は暫く口を噤んだままで、机上に置かれた雑誌の表紙タイトルを、ぼんやりと見つめていた。