ボーダーライン。Neo【下】

「まず、これが炊飯器ね?」

「……うん」

「で、こっちが調理器具。包丁とまな板が入ってるから触らないでね?」

「あ、うん」

「で、そっちの箱がお鍋やフライパンで、向こうの箱が基本的な調味料とプラスチック性のお皿と器。明日あたしが全部片付けるから、絶対触らないで。良い?」

「オッケーです。つか、本当にキッチン用品買い揃えたんだ?」

「当然でしょ? それじゃあ、ちょっとキッチン見ても良い?」

「……どうぞ?」

 檜の部屋はL字型の配置で、間取りは1LDK。キッチンは奥まった場所に有り、コンロでは無く二口のIHだ。

 事前に聞いていた通り、キッチンには殆ど物が無い。冷蔵庫も一人暮らし用の小さなもので、冷凍庫も冷蔵室もかなり狭い。これじゃあ全然買い置き出来ない。

 備え付けキッチンの扉を開ければ収納スペースは有るのだが、ボールやタッパなど勿論無いし、食器も皆無。

 ーーしまったな。ボールは買うの忘れてた。暫くは持ってきた器で代用しよう。

 あたしはあらゆる所を開けたり閉めたりしながら溜め息をついた。

「こんなのでよく生活してたね?」

「あー……うん。俺、料理しないし。基本は下で買ってたから」

 ーー下って事はエントランスに入ってすぐのあのカフェか……。

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