ボーダーライン。Neo【下】

「国際線、ですか?」

 笹峰さんの問いに、僕は周囲を警戒しながら「はい、まぁ」と曖昧に答えた。

「私は今日の昼まで、海外で撮影があって。今帰国した所なんです。
 Hinokiさんも、お仕事か何かで?」

 どう答えたら良いものかと僅かに逡巡(しゅんじゅん)し、考えた末に素直に告げる事にした。

「大切な人に、会いに行くんです」

「大切な人?」

「……はい。会えるかどうか……、確証も無いんですけどね」

「……そうですか」

 彼女は一度俯き、それは、とか細い声で続けた。

「Hinokiさんがずっと、想い焦がれていた人ですか?」

「はい」

 サングラスで表情は分かりにくいが、笹峰さんは少し悲しそうに見えた。

「やっぱり……私じゃ駄目なんですね?」

 沈んだ声を聞き、僅かにドキッとする。

「私では。Hinokiさんの心は動かせませんか?」

 彼女の気持ちは既に本人から伝えられていたが、やはり曖昧な態度は取れない。

 僕は、冷たいかもしれないと思いつつ、この際だからときっぱり線引きをした。

「笹峰さんだからどうってわけじゃ無いんです。ただ俺の気持ちが……もうずっと彼女に向いたままで、そこから動かないんです。
 だから……ごめんなさい」

 小さくお辞儀をし、再び歩き出そうとした。

「最後まで優しくて……残酷な方ですよね」

 ーーえ。

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