ボーダーライン。Neo【下】
背格好とその雰囲気から、幸子だと思った。
幸子に違いないと思うと、心臓がばくばくと脈を早める。
風が吹き、ふわりと彼女の髪がなびいた。髪は耳と肩の間ぐらいの長さで、記憶の彼女と違い短かかった。
切ったのかと思い、そのままジッと凝視する。
幸子が向いている方向とは逆方向に、子供連れの母親が通り過ぎた。
無邪気な子供の笑い声に釣られ、幸子がこちらへ振り返った。
数秒を経て僕の視線と重なり、彼女が「あ、」と口を開ける。目を瞬いて僕をジッと見ている。
やがて彼女はこちらに足を向け、すぐ側まで歩み寄った。
「来てくれてありがとう」
そう言って隣りのスペースを空けると、幸子は頬を窪ませ、くしゅっと微笑んだ。
「……あんな歌出されたら。来るしかないじゃない」
「ハハ。それもそうか」
僕の隣りへ腰を下ろす際、幸子の柔らかそうなボブヘアーがふわりと風に揺れた。
***