暗闇の先に…
金曜日、仕事が終わった酒井さんが部屋を訪ねて来た
「彩、最近どうしたの?体調が悪いなら病院に行った方がいいよ。ちゃんと食べてる?」
「……うん」
そう言いながら、机に料理が入ったタッパーを並べていく
「4月から同棲でしょ?だから料理の腕を磨いてんの。ちょっと作りすぎたから彩にも食べるの手伝ってもらおうと思ってさ」
はいっと渡された皿と箸
「……いただきます」
どの料理も美味しくて、ずっと重たかった気持ちが少し軽くなった感じがした
「何があったか分からないけど。あんまり、思い詰めたら体に良くないからね?」
酒井さんの さり気ない優しさが心に染みて泣きそうになる
「彩、あんたは一人じゃないからね。苦しくなったら、周りに頼っていいんだよ?」
何も言わずに黙々と食べる私に、ニッコリ笑って頭を撫でてくる
きっと酒井さんは何でもお見通しなんだろうな
「酒井さん、ありがとう。お陰で元気でた」
ご飯を食べ終え、部屋に戻る酒井さんに笑顔でお礼を言った
「そ?なら良かった。彩は やっぱり笑顔がかわいいよ。じゃ、おやすみ」
パタンと閉まった扉
しんと静まり返った部屋に一人
さっきまで明るかった部屋は色が抜け落ちたように一気に暗くなった
逃げ出すかの様にコートを着て部屋を飛び出した