子連れシンデレラ(1)~最初で最後の恋~
最初で最後の恋(回想)
私はバルコニーに出て、一人で寂しくサンセットを見つめる。
夕映えに沈む太陽を見て、寂しいキモチが溢れた。

拓郎の死から一年が過ぎた。
忘れる為に来たのに、私の頭の中は拓郎に瓜二つの南条さんのコトで一杯。

「!!?」

突然、ボストンバックを持った南条さんがバルコニーに越しに私を呼んだ、

「阿川さん」

「えっ?」

「君の宿泊してる部屋をフロントで訊いて来たんだ」

「え、あ・・・」

「約束しただろ?
君に逢いに行くって・・・」

「あ・・・そうでしたね・・・」

「入っていい?」

「あ・・・どうぞ」

彼は先にボストンバックを放り込み、バルコニーの柵を乗り越え、中に入って来た。

「一人でこのコテージ広すぎない?」

「あ・・・まぁ」

「丁度良かった・・・ガチで「ヘブンズホテル」に宿泊しに行ったら、満室だって言われて・・・他のホテルも絶望的。
此処も・・・満室らしい」

「まさか…貴方・・・此処に泊まろうと思ってますか?」

「・・・ダメかな?」

「ダメに決まってます・・・」

「君の婚約者に似てるんだろ?」

「でも、貴方は拓郎じゃないでしょ?」

「そうだよ…俺は拓郎じゃない・・・まぁ、いいけど…レンタカー借りたし・・・車の中で寝ればいいコトだ。それよりも夕食は?船酔いの礼に夕食奢るよ」


「・・・」

夕食は大輔さんのフレンチコースを食べる予定だった。

「ゴメンなさい・・・夕食は「ブルーサファイア」で食べると言うか・・・」

「そっか・・・いいよ・・・じゃ明日…また来る」

「え、あ・・・」

南条さんはボストンバックを手に持ち、バルコニーから退散しようと踵を返す。

「待って・・・」

私は彼を引き留めた。

「・・・私と契約しましょ」

「契約?」

「私がこの島に滞在する四日間・・・恋人でいる・・・契約。その契約を吞んでくれたら、泊めてあげます」

「それは君の婚約者・拓郎としてか?」

「・・・そうね・・・」

「いいよ・・・じゃ俺は此処に泊まっていいんだね・・・」

「勿論」



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