子連れシンデレラ(1)～最初で最後の恋～

私が涙を拭いていると
「その事実は当分の間・・・社長には伏せておいてもらえますか？阿川さん」


「黒沼さん・・・」


「・・・社長は記憶がないんです。今貴方が、此処で話をすれば・・・混乱するし・・・優しい性格です。
きっと・・・貴方に一人で玲也君を産ませ、育てさせたコトを申し訳なく思うでしょう。私がいいと言うまでは・・・隠し通して下さい。いいですか？阿川さん」

「・・・」

「お願いします」

黒沼さんは柊也さんの性格を考え、私に頭を下げ、頼み込んだ。

「・・・分かりました」

私も黒沼さんと同意見だった。

彼の夢に出て来た私に似た女性は私自身。
彼は記憶を失いながらも、潜在的に私のコトを記憶してくれていた。
だから、こうして私に近づき、玲也にも優しくしてくれる。

「でも、私隠し通せるか…自信がありません」

「えっ？」

「思ってるコト…つい顔に出てしまうタイプだから・・・」

「そうですか・・・でも・・・まぁ、お願いします」

「努力はします」

「・・・社長が貴方に惚れた理由が少しだけ分かりました」

「黒沼さん？」

「話は以上です・・・そろそろ、会議が終わる時間なので、私は帰ります。
社長には私がここに来たコトは内緒ですよ・・・」

「はい」