すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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大学の研究職の者たちは暗黙の了解で、学生たちは知らない者も多いが、一応ポイコニー国の第2王子という肩書がついている。

公務で出る時は王子然とした姿で表に出ているが、普段は学生と変わらないような楽な格好が当たり前。

着飾った格好など邪魔以外何ものでもない。

兄に比べておっとり王子として認識されているが、それは公務が朝に多いことが原因なのだ。

研究で夜遅くまで作業していることが多いので、朝は弱い。自分の中では半分眠っている状態なのでそんなふうに思われているのだが、その方が変な期待されなくていいかと開き直っている。

次の王になる王太子の兄がいるから、自分は表に出ずに裏でいい。

そういう思いで興味のある研究に没頭していたのだが、結婚話が舞い込んできた。

去年に兄が無事に結婚の儀式が済んで、ようやく落ち着いてきたところだったのに。

兄と3歳離れているんだから、3年後でいいんじゃないか?
と言ったら、今から準備しても3年ぐらいかかる。

しかも兄達は幼馴染、お前にそういう相手がいるのなら別だか、と言われて押し黙った。

興味が持てる女性は今までいない。

てか、自分がどんなタイプが好きなのかも判らない。

これは…親としても心配になる案件か……。

自分でもそう思ってしまったので、強く反対が出来なかった。

それに。

政略結婚ということは、お互いが利点があるために結ぶ契約みたいなものだ。

裏を返せば、本気で好きにならなくてもいい。

相手もそれは判っていることだろう。

砂漠の国である大国の公女を娶ることで鉱石資源と、森林の国である豊かな果樹の輸出入も円滑になり、世界の中で話題になることで、特産物の宣伝効果も期待できる。

国同士が遠く離れていることで内政干渉も少なくて済みそうだ。

国のためになるのなら、まあいいか、と。


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