すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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静かな場所よりも、少し雑多な方が集中できるので、資料をまとめたりする机上の仕事は専ら図書館でするようになっていた。
最初はただの新入生だろうと思っていた。
定位置の作業場にしている図書館の奥に現れた彼女は、その日から同じ場所で読書をするようになった。
彼女ひとりくらいが少し視界に入るくらい、別に何の影響もなかった。
『あ、人がいるな』というだけの感覚。
それでも、大抵の人は居心地が悪いのか近寄ってこなくなるのが普通なのだが、彼女は気にする様子もなく定位置に座る。
そして自分も不思議とそれが当たり前のように思っていた。
だから彼女が困っている様子を見て、つい自然と手が伸びた。
「ありがとうございます」
そう言って笑顔を見せた彼女に不意を突かれたのだ。
間近に見た大きな紺色の瞳が自分を見上げていた。
意識をして彼女を見てみると、彼女がいろいろ気を使っている様子が見て取れた。
歩く足音、速度。椅子を引く動作に、立つ座るといった振る舞い。
気にならない程、静かに優雅。
一朝一夕では身につかない仕草だろう。
気付いてしまったら、自然と目に入る。
だから最近は執務室で仕事することも増えた。
コンコンと扉がノックされ、侍従のシリンと近衛のコーキが入ってきた。
「王子殿下、先日の件の資料、揃えて参りました」
そう言って楽しそうにニヤリと笑った。
「なんだ」
「いえ、殿下が女性に興味を持つようになるなんて、嬉しい限りです」
「っ で、報告は?」
先を促すと1枚のまとめられた報告書を差し出して一言。
「ユナ=タヤカウ。殿下の婚約者殿ですよ」
静かな場所よりも、少し雑多な方が集中できるので、資料をまとめたりする机上の仕事は専ら図書館でするようになっていた。
最初はただの新入生だろうと思っていた。
定位置の作業場にしている図書館の奥に現れた彼女は、その日から同じ場所で読書をするようになった。
彼女ひとりくらいが少し視界に入るくらい、別に何の影響もなかった。
『あ、人がいるな』というだけの感覚。
それでも、大抵の人は居心地が悪いのか近寄ってこなくなるのが普通なのだが、彼女は気にする様子もなく定位置に座る。
そして自分も不思議とそれが当たり前のように思っていた。
だから彼女が困っている様子を見て、つい自然と手が伸びた。
「ありがとうございます」
そう言って笑顔を見せた彼女に不意を突かれたのだ。
間近に見た大きな紺色の瞳が自分を見上げていた。
意識をして彼女を見てみると、彼女がいろいろ気を使っている様子が見て取れた。
歩く足音、速度。椅子を引く動作に、立つ座るといった振る舞い。
気にならない程、静かに優雅。
一朝一夕では身につかない仕草だろう。
気付いてしまったら、自然と目に入る。
だから最近は執務室で仕事することも増えた。
コンコンと扉がノックされ、侍従のシリンと近衛のコーキが入ってきた。
「王子殿下、先日の件の資料、揃えて参りました」
そう言って楽しそうにニヤリと笑った。
「なんだ」
「いえ、殿下が女性に興味を持つようになるなんて、嬉しい限りです」
「っ で、報告は?」
先を促すと1枚のまとめられた報告書を差し出して一言。
「ユナ=タヤカウ。殿下の婚約者殿ですよ」