すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「……記憶と違うのだが…」

長い沈黙の後、ぽつりと呟いた。

対面式でのタヤカウの正装や、晩餐会での衣装。

綺麗に着飾られ貼りつけたような笑みを浮かべた婚約者と、ふわりと自然に笑った彼女が結びつかない。

「女性は格好と化粧でずいぶん印象も変わりますからねぇ」

「しかも、それを殿下が言うんだな」

二人から猛ツッコミが入る。

自分の公務用と普段の印象が違うのは自覚している。

「安心してください。図書館で見る姫君の方が、本来の性格のようです。彼女の侍従たちに探りを入れましたから確かです」

シリンが笑顔を崩さずに報告する。

「殿下の初恋を応援してあげたいのは山々だったのですが、婚約者を放っておいて別の女性を口説いているなどなれば、面倒なことになりますからねぇ」

「殿下の評判が地に落ちる事態にならなくてよかったな」

うんうんと頷くコーキと一緒に言いたい放題だ。

報告書には、幼い頃から本好きと書かれている。

好みの男性=不明。…わからないのか・・・。

じーと真面目に文章を読んでいると、また二人が何か言いたそうにニヤニヤしながら見ていることに気付く。

「何だ」

「いえ、障害はないので頑張ってくださいね」

「ぷぷ…殿下がかわいい」

「うるさいっ」

本心から応援はしてくれているのが伝わるが、遠慮のない二人にからかわれ、思わず声を上げてしまった。
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