すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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瞳と声音で無意識に口にした名前に自分でも驚いた。
こんな所に居るわけがない人で。
そしてすぐに誰なのか気づく。
そんな中、自分の驚きの声を掻き消すくらいに、周囲のざわめきが大きかった。
「キーマ王子殿下」
「珍しい」
「宴に殿下二人が揃うのは久しぶりなのでは」
振り向いて見たキーマ様は宴用に華やかな雰囲気の衣装で、上着を止めるための翡翠で飾られた金具が胸元で存在感を放っていた。
瞳と同じ翠色。
今まで眼鏡もかけることも無く、こんな近い距離で見ることの無かったので、気づいてなかった。
深い紺色の髪の隙間から瞳の視線が向けられる。
つながれてない左の手が、彼女の髪飾りに触れる。
今日のためにと用意されていた翡翠の飾り。
もしかしなくてもお揃いで……
気づいて目を見つめ返した所に、ふわりと笑顔を向けられた。
これは…ドキドキしないなんて無理だろう。
思わず逃げ出したくなったが、しっかり手を取られていて動けない。
「ユナ」
名前を呼ばれ手を引かれる。
何組かが踊っている中央のフロアまで出て、手をダンスの形に組み直される。
公女としての教育として踊れないことはない。
それでも、たくさんの好奇の目に晒されて、今まで一緒に踊ったことの無い…好意を持った彼とダンスに緊張するなと言う方が無理だ。
「ゆっくり、合わせるだけで大丈夫だよ」
その緊張を感じ取られてか、耳元でクスリと笑われる。
「そういう私も、こういうのは初めてで苦手だけどね」
瞳と声音で無意識に口にした名前に自分でも驚いた。
こんな所に居るわけがない人で。
そしてすぐに誰なのか気づく。
そんな中、自分の驚きの声を掻き消すくらいに、周囲のざわめきが大きかった。
「キーマ王子殿下」
「珍しい」
「宴に殿下二人が揃うのは久しぶりなのでは」
振り向いて見たキーマ様は宴用に華やかな雰囲気の衣装で、上着を止めるための翡翠で飾られた金具が胸元で存在感を放っていた。
瞳と同じ翠色。
今まで眼鏡もかけることも無く、こんな近い距離で見ることの無かったので、気づいてなかった。
深い紺色の髪の隙間から瞳の視線が向けられる。
つながれてない左の手が、彼女の髪飾りに触れる。
今日のためにと用意されていた翡翠の飾り。
もしかしなくてもお揃いで……
気づいて目を見つめ返した所に、ふわりと笑顔を向けられた。
これは…ドキドキしないなんて無理だろう。
思わず逃げ出したくなったが、しっかり手を取られていて動けない。
「ユナ」
名前を呼ばれ手を引かれる。
何組かが踊っている中央のフロアまで出て、手をダンスの形に組み直される。
公女としての教育として踊れないことはない。
それでも、たくさんの好奇の目に晒されて、今まで一緒に踊ったことの無い…好意を持った彼とダンスに緊張するなと言う方が無理だ。
「ゆっくり、合わせるだけで大丈夫だよ」
その緊張を感じ取られてか、耳元でクスリと笑われる。
「そういう私も、こういうのは初めてで苦手だけどね」