すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「忙しくてなかなかキーマ殿下とはお逢いできていないとか」
「そうですね」
当たり障りのない笑顔を向けて、相槌を繰り返す。
「こういう参加自由の宴に、キーマ殿下が出席される事は今までの記憶にはありませんし、来られるんでしょうかねぇ」
少し悪意のある言い方に、気づかない振りをする。
しかし、今までこういう宴に出ることが少な無かったキーマ様が出席する可能性は低いと見ているのだろう。
ユナ自身も彼の忙しさから、出席できなくても仕方ないのではと思っている。
一緒に居られば嬉しいが。
「今回は公女様のお披露目ということですしねぇ…」
仲睦まじく踊る王太子夫妻を眺めながら、彼は手に持ったグラスの酒を飲み干す。
一曲だけ踊って戻って来ようとしている二人を見て、思いついたような口調で言う。
「キーマ王子殿下の代わりに…王太子殿下と一曲でも踊ってはいかがでしょうかねぇ」
「え?」
「正式な発表はまだですし、タヤカウの公女様がポイコニーと親密な交流があると示すだけでも、意味があると思いますよ。ね、公女様」
止める間もなく、戻ってきた王太子に声をかけに行こうとする彼。
仕方ないのかな…そんな思いを胸に抱いた時、背後から延びた腕がユナの手を取った。
「それは、私の役目ですから」
驚きで振り返って見えたのはすぐ間近に捉えた緑の瞳で…
「え? ベルデ様?」
「忙しくてなかなかキーマ殿下とはお逢いできていないとか」
「そうですね」
当たり障りのない笑顔を向けて、相槌を繰り返す。
「こういう参加自由の宴に、キーマ殿下が出席される事は今までの記憶にはありませんし、来られるんでしょうかねぇ」
少し悪意のある言い方に、気づかない振りをする。
しかし、今までこういう宴に出ることが少な無かったキーマ様が出席する可能性は低いと見ているのだろう。
ユナ自身も彼の忙しさから、出席できなくても仕方ないのではと思っている。
一緒に居られば嬉しいが。
「今回は公女様のお披露目ということですしねぇ…」
仲睦まじく踊る王太子夫妻を眺めながら、彼は手に持ったグラスの酒を飲み干す。
一曲だけ踊って戻って来ようとしている二人を見て、思いついたような口調で言う。
「キーマ王子殿下の代わりに…王太子殿下と一曲でも踊ってはいかがでしょうかねぇ」
「え?」
「正式な発表はまだですし、タヤカウの公女様がポイコニーと親密な交流があると示すだけでも、意味があると思いますよ。ね、公女様」
止める間もなく、戻ってきた王太子に声をかけに行こうとする彼。
仕方ないのかな…そんな思いを胸に抱いた時、背後から延びた腕がユナの手を取った。
「それは、私の役目ですから」
驚きで振り返って見えたのはすぐ間近に捉えた緑の瞳で…
「え? ベルデ様?」