すれちがいの婚約者 ~政略結婚、相手と知らずに恋をしました~
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「先程のタヤカウの衣装も似合っていたが、この衣装も可憐でいいな」

「本当に、女の子は飾りがいがあっていいわねぇ」

飾り気のない二人の息子をチラっと見て、ため息の大層な演技をするのは国王夫妻。

先程と同様、気さくな性格のように見受けられる。

晩餐会と言っても家族となる国王夫妻と王太子夫妻との6人のみ。

お披露目ではなく、ゆっくりとした顔合わせのようなものだ。

王太子のカーゼ様は背も高くがっしりしていて、武道が得意そうな様子。

去年に結婚したという王太子妃のヨウネ様はにこやかで美しい女性。

国内の政務にも携わる貴族の令嬢らしいが、二人を見ていても仲睦まじい。

そして、キーマ王子殿下。

遅れて現れた彼は言葉だけの謝罪の挨拶を済ました後は、黙々と食事を進めて国王の歓談には参加しない。

濃紺色の長い前髪を垂らしているので、表情もあまり見えない。

まあ、眼鏡をかけていないので、元々見えづらいのだが、
『私の事は放っておいてくれ』感が全身から立ち上っているように見える。

「キーマは大学の学術機関で学生と交わって研究しているのだよ」

「今のテーマはなんだ」

「過去の農産業に於ける廃業の理由と利点の検証」

「???」

「例えば…今はフォークは金属製。昔は木製。なぜ金属製に成り代わって行ったのか、その理由をいろいろ考えて検証していく、ようなものだ」

とっさに理解できていないのが表情に出ていたのだろう、手に持ったフォークを例えに判りやすく説明してくれた。

聞けばしっかりと話してくれるらしい。

しかし、それ以上の話題もなく、まだ用事がありますのでと早々に退出してしまった婚約(予定)者とはゆっくり話をすることが出来なかった。

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