あの夏、君と。〜もう一度笑って〜
色々話したあと、お互いの身の上話もした。
私と祥ちゃんは夢中で話した。
日が暮れるのはあっという間で。
『人魚さん、今日も海に帰っちゃうの……?』
祥ちゃんは子犬のような顔で尋ねる。
……!可愛い……!!
『私、海にしか帰るとこないから……』
『俺ん家!宿屋やってるんだ!……良かったら……泊まってってよ!また何年も会えなくなるのやだし……。美奈子にも、会わせたいんだ!!!』
必死な祥ちゃんの押しに負けて、私は祥ちゃんのお家にお世話になることにした。
祥ちゃんのお家が経営してる宿の一室を借りた。
お母様もお父様もすごくいい人で、歓迎してくれた。
ご飯を食べ、お風呂に入った。
お米、初めて食べた……。ホカホカしてる。
温かいお湯も初めて。
祥ちゃんの服を借りた。
ダボダボなスウェット。
祥ちゃんのお母様が私の髪を結んでくれた。
部屋にいると、『人魚さん、入っていい?』と、祥ちゃんの声が聞こえた。
『いいよ!』
ふすまを開けて、ダル着の祥ちゃんが入ってきた。
『……なんかごめんね??押し切っちゃって』
苦笑いしながら謝った祥ちゃん。
『ううん!むしろ嬉しい!ありがとう!』
笑顔で返す。
『祥ちゃん、ずっと探してくれてたの??あの日11年前から』
ふとしたことを尋ねる。
『……あの日の笑顔が忘れられなくて……あの日の次の日からずっと毎日、海に行ったんだ……。重くて……ごめん…!』
ずっと……探してくれてた……。
胸の奥がキュウっとした。
苦しいのに、嫌な苦しさじゃなくて、溢れ出す愛おしさ。
顔が綻ぶ。
『……嬉しい……。』
唇に柔らかいもの……。
祥ちゃんの唇が私の唇を食む。
え……??
『……祥……ちゃん……??』
祥ちゃんは、何かに気づいたように、私の両肩を掴み、引き離した。
俯き、『ごめん……』と言った。
『……ごめん……。可愛くて……。ずっと会いたかった人に会えて……。順番が逆に……。』
可愛い……??
ずっと……会いたかった人……??
『……人魚さん、俺、ずっと……助けてもらった日から11年間ずっと……人魚さんが好きなんだ……!!』
好き……???
私を……???
目の前で何が起きたか分からなかった。
だけど……。
『祥ちゃん……。私の初恋は、祥ちゃんです……。』