極上社長に初めてを奪われて、溺愛懐妊いたしました
そう思うものの、千紘さんの声を聞きたいと思う自分もいて、私はカバンからそっとスマホを取り出した。

けれど、そこに表示された名前を見て、思わず気が抜けてしまう。

さっきまで出るか出ないかあんなに悩んでいたのに、電話の相手は千紘さんではなくて祖母だった。


「もしもし。おばあちゃん、どうしたの?」


スマホを耳に当てると、すぐに祖母の声が返ってくる。


『桃ちゃん、久しぶり。今は仕事中? 電話しても大丈夫?』

「うん。大丈夫だよ」


祖母には早退して自宅にいることは告げないまま会話を続ける。


『今年も、お隣さんからさくらんぼをたくさん頂いたの。桃ちゃんに送ったから、明日か明後日には届くからね』

「そっか。もうそんな時期なんだ」


最近いろいろあり過ぎて気が付かなかった。

今年も、私の大好物のさくらんぼの季節なんだ。

この時期になると祖父母の家のお隣さんが、さくらんぼ農家の親戚からさくらんぼをたくさん貰うらしく、それをお裾分けしてくれる。
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