モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「え、ええぇっ!?」

 私が声を上げると、会場中にどよめきが起こる。会場内に流れていたジャズの演奏が聞こえなくなるほどだ。

 レジスが第一王子!? どういうこと!? 庶民じゃなかったの!?

 頭の中がパニックに陥る。それは周りのみんなも同じで、楽しそうにしているのはひとりそのことを知っていたであろうマティアスのみ。
 もしかして、さっきマティアスがアナベルを止めたのは、レジスが現れることを勘付いていたからなのか。

 肝心のレジス本人はというと、いつものように真顔を貫きながら、私とエミリーのほうへと歩いてくる。

 白と青を基調とした軍服モチーフの正装姿で、堂々と歩く姿は、どこからどう見ても庶民には見えない。

 レジスは私とエミリーの目の前までくると、ピタリと足を止めた。

「……レ、レジス?」

 威厳を放つレジスを見上げれば、視線がかち合う。

「フィーナ。お前の退学の件だが、ついさっき正式に白紙になった」

 無言を貫いていたレジスがやっと口を開いたかと思えば、内容は突拍子のないもので、私は目が点になる。

「ど、どういう――」
「退学がなくなったって、どういうことよ!」

 私の声をかき消すような声量で、エミリーがレジスに食ってかかった。
 エミリーからさっきまでの自信満々な笑みは消え、余裕がなさそうに見える。レジスがこんな絶妙なタイミングで戻って来るなんて、エミリーにとっては計算外のことだったのかもしれない。

「どういうこともなにもそのままだ。お前は学費を出すかわりにフィーナを散々使用人扱いし、自分にとって使えないと判断したら停学。ついには退学にするつもりだったようだが、残念だったな」
「なによその言い方……! まるで私が悪いみたいじゃない! フィーナが入学できたのは私のお陰なのよ! 援助するかわりに、私の世話をするという約束だったのよ! 知ったような口を聞かないで!」
「おかしいな。聞いたところ、ルメルシェ家からメレス家にフィーナの入学をお願いしたらしいじゃないか。知り合いのいない学園で、ひとりだと不安だからという理由で。フィーナから入学と援助を頼んだわけじゃない。約束だって〝エミリーのサポートをよろしく頼む〟としか言われてなかったようだが? それがまさか細かい身の回りの世話まですることになるなんて、誰も思わないだろう。こんな適当な口約束で、果たしてフィーナが約束を破ったといえるのか?」

 エミリーの話との食い違いに、会場はざわつき始めた。
 私もなにがなんだかわからず、側でふたりのやり取りを見ていることしかできない。

 ――レジスが王子なのも、退学が取り消しになったのも、私とエミリーの事情にやたら詳しいことも、全部わけがわからない。

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