モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 時計を見ると、パーティーが始まる時間になっていた。
 マルトさんはパーティーに出す料理の手伝いで、今日は寮を留守にしている。
 私は食堂のキッチンを借りる許可を事前にマルトさんからもらい、ひとりでクリスマスパーティーを始めることにした。

 いつもキッチンに入るときに着ている給仕服に着替えていると、頭の中にパーティーへ向かう寮生や、さっきのエミリーの姿が過る。
 ――みんなはあんなにキラキラした格好をしているのに、私は給仕服なんて、悲しいを通り越して笑えるわ。
 でも、着たくもない地味なドレスを着させられるよりはこっちのほうがいい。着飾っているみんなを少しも羨ましくないかと問われれば、嘘になるけれど。
 
 ひとりで仕込んでおいたチキンを焼き、簡単なケーキも用意した。静まり返った食堂にそれらを並べ、赤ワインに見立てたグレープジュースをグラスに注ぐ。
 部屋を暗くして、ツリーの飾りの電灯と、ロウソクを並べて火を灯せば、それっぽい雰囲気になった。
 最後の一本のロウソクに火を灯すと、無意識にため息が漏れた。
 ――クリスマスなんてひとりでも楽しめると思っていたし、実際準備していたときも楽しかった。でも、最近はいろんなひとと関わりすぎたせいだろうか。若干の寂しさが私を襲った。

 みんなはパーティー真っ只中。今日は遅くまで楽しい時間が続くことだろう。
 私は私で楽しもう。せっかく料理とケーキを用意したんだから。このご馳走は、今日まで課題をがんばった自分へのご褒美だ。
 気を取り直し、席に座って料理を食べようとしていると、食堂へ誰かがやってくる足音が聞こえた。
 ……まだ、寮に生徒が残っていたのだろうか。全員を見送ったわけではないから、その可能性はある。でも、その生徒はパーティーに参加していないことになる。寝坊でもして、遅れて向かうとか?

 誰がくるのか様子見していると、食堂へ姿を現したのは――私がいちばん、一緒に今日を過ごしたいと、心の中で願っていたひとだった。

「……レジス?」
「やっぱり。フィーナはここにいる気がしてた」
「ど、どうして!? パーティーへ行かなかったの!?」

 思い返せば、今日はレジスの姿を目にしていなかった。勝手に、レジスは見ていないうちにさっさと会場に行ったものだと思っていた。まさか寮に残っていたなんて。
 アルベリクは今日から冬休みに入る。なのでよほど遠いところから留学してる生徒以外は、明日から自分の家に帰るものばかりだ。
 今日レジスに会えなければ、しばらく会えないことがわかっていた。だから、今こうやってレジスに会えたことが、驚きつつもうれしくてしょうがない。
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