モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 二週間ほどの冬休みを終え、私はアルベリクの寮へ戻った。
 停学中で学園に通えないのに、寮には戻るなんておかしな話だ。でも私は最後の最後まで、課題をやり遂げるという任務がある。
 退学になろうと、奇跡的に停学が解けるようなことがあったとしても、そのどちらかが決まるまでは、私は一応この学園の生徒なのだから。

「フィーナ、おにぎりは間に合いそうかい?」
「なんとか! あ、そうだマルトさん。先週サロンでシールを集めた生徒が何人かいたから、オムライスの準備もしておいたほうがいいかも」
「了解。……やっぱりフィーナがサロンを始めてから、本当に寮が賑やかになったねぇ」

 新学期が始まり、また寮生たちで溢れている食堂を見ながら、マルトさんは微笑む。

 相変わらず私は、寮の食堂でマルトさんの手伝いをしながら、サロンを開き生徒たちの相談を聞く日々を送っていた。もちろん、倉庫の修復もラストスパートをかけている。
 倉庫と寮を往復するばかりの毎日には、もうすっかり慣れっこだ。

 この毎日がもうすぐ終わるのかと思うと……なんだか寂しい。
 最初は〝学費免除のために仕方なく〟やってたことだったのに、いつしか心から楽しむようになっていた。
 サロンも、マルトさんの手伝いも、倉庫の修復をしながら、シピとしてレジスに会いにいくことだって。

 エミリーとのいざこざを放置してきた以上、私の退学はほとんど決まったようなもの。
 退学になると、もうここにはいられない。アナベルにもマルトさんにも――レジスにだって会えなくなるんだ。

 そんなのすっごくいやだけど、今さら成す術などないのもわかっている。
 私の家に、高額のアルベリクの学費を出す余裕などあるわけない。
 エミリーに頼む以外道はないのだが、そうなると私はまた、エミリーにあと一年いいように使われるだけだ。
 自分のプライドをかなぐり捨ててまたエミリーに媚を売るなんて、絶対にしたくない。

 でも、レジスのそばにいるには、ほかに方法が……。

 私はひとりで葛藤していた。やっと両親にも『エミリーのご機嫌とりをしなくていい』と言ってもらえたのに。ここへきて、自分の抱いた恋心が私のプライドの邪魔をするなんて。
 退学上等! 学費免除されればオーケー! なんて安直な考えをしていた私は、残念ながらもうどこにもいない。

 ――とりあえず今は、お母様に言われたように、残りの日々を大切にして過ごさなきゃ。

「……空いてるか?」
「レジス! いらっしゃい」

 今日はお悩みサロンの日。
 いつものようにアナベルやほかの常連生徒を占い終えたあと、レジスがサロンに顔を出した。
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