モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
 久しぶりのパーティーは、目がちかちかするほど煌びやかな空間だった。

 あちこちで親睦を深めている生徒たち。
 卒業する先輩とそれに涙する後輩や、口説きあっている男女。
 今までパーティーでもひたすらエミリーの後ろをついていくだけだった私は、なにをしたらいいかわからなかった。

 とりあえず、アナベルたちが一緒にいてくれるから大丈夫だろう――そう思った矢先のことだった。

「アナベル様! こちらで一緒に乾杯いたしましょう!」
「アナベル様! マティアス様はまだ来られていませんので、先にわたくしとお話してくださいませ!」
「え!? ちょ、ちょっと!」

 多数の女子生徒がアナベルに押し寄せ、アナベルは抵抗する暇もなく女子生徒たちに連れて行かれてしまった。
 カロルとリュシーは人の波に攫われていったアナベルをすぐさま追いかける。私はその流れをぽかんと眺めていることしかできず、いつのまにかひとりになっていた。

 アナベルは今や学園でとても人気ある生徒だということは、ちらりと耳に入っていたけど。まさかここまでとは。
 まるで、小説のヒロインがエミリーからアナベルに変わったように思えた。


「やあフィーナ。調子はどうだい?」

 パーティーの雰囲気に馴染めずに、会場の隅でグラスを持ったままぽつんと立ち尽くしていた私に話しかけてきたのはマティアスだった。今しがた到着したようだ。
 
「マティアス様。お久しぶりです。調子は……ぼちぼち、かな?」

 お世辞にも心の底から楽しめているとは言えなくて、私は当たり障りのない返事をした。
 こうしてマティアスとふたりで会話をするのは、サロン以来だ。

「せっかくのパーティーだ。楽しまなきゃ損だよ。それにしても、今日の君は見違えるほど綺麗だね。ついつい、誘われるように足が君に向いてしまったよ」
「もう。お上手なんですから。……このドレス、ドレスを持っていない私に、アナベル様がプレゼントしてくださったんです」
「へえ。アナベルが。さすが、アナベルはセンスがあるな。そのドレス、君によく似合ってる」

 アナベルのことを話すマティアスの表情はとても柔らかい。今もふたりの仲が良好であることがわかり、私まで笑みがこぼれた。

「マティアス様も、今日は一段とかっこいいです。マティアス様は、やはりそういった格好がお似合いですね」
「そうかなぁ? 王宮ではいつもこういう格好をしていたから、僕的には制服のほうが新鮮味があってお気に入りなんだけど」

 マティアスはそう言うが、さすがパーティー仕様というだけあって、制服姿よりも王子様感は何倍も増幅している。
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