モブ転生のはずが、もふもふチートが開花して 溺愛されて困っています
「……マティアス様って、本当に物語に出てくる王子様みたいですよね。あらゆる女性たちが憧れてしまうのもわかります」

 改めて思う。オレンジの髪も、ゴールドの肩章も、笑顔も――なにもかもが、私には眩しすぎるひとだと。
 
「君は憧れてくれないの?」
「へっ?」

 にこにこと笑いながら、冗談まじりにマティアス様が言った。腰を屈めて、私に目線を合わせてくる。

「私は……もうずいぶん前から、ずっとマティアス様に憧れていましたよ」

 なんてったって、前世からですから。
 マティアスとは、この国で暮らしている限りいつかまた会うことはあるだろう。でも今日はひとつの区切りとして、長年の想いを伝えることにした。

 ちょっとからかうつもりが、意外な反応が返ってきたことに、マティアスは驚いたようだ。しかし、すぐに目を細めて微笑んだ。

「……ありがとう。あーあ。今の言葉、ぜひあいつの前で言ってほしかったな。今度もう一度言ってくれる?」
「あいつ?」
「君にとっての〝憧れ以上のひと〟だよ」

 マティアスはそう言うと、私にウインクを飛ばす。
 誰のことを言っているのかに気づき、私は恥ずかしくなったのと同時に――未だ姿を見せない彼のことを思うと、寂しさと不安が襲ってきた。

「フィーナ、大丈夫だ」

 私の心中を察してか、マティアスは私の頭をぽんぽんと優しく撫でた。

「君の王子様は、必ず君を迎えにくるよ」
「……マティアス様」
「王子ってのは、お姫様を迎えに行かずにはいられないんだ」

 マティアスが言うと、なんだか説得力のある言葉に聞こえる。大した関わりもなかったのに、私を慰めてくれる温かな手に、感謝の気持ちでいっぱいになった。

「ふふ。だったら、マティアス様はそろそろアナベル様を迎えに行かれたほうかいいのでは? あまり待たせると、拗ねてしまわれますよ」
「おっといけない。じゃあ、僕は行こうかな。……フィーナ、次は学園で楽しくおしゃべりをしよう」

 私に手を振ると、マティアスは女子生徒に囲まれているアナベルのもとへ歩いていった。
 退学の話はできなかったので、最後の言葉には笑顔しか返せなかったけど……マティアスとまた話せたことは、純粋に嬉しかった。
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