秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「だいたい好みわかる。」
「エスパーだ…」
「葉山が自然体で居てくれるからだよ。わかりやすい。」
確かに言われてみればそうかもしれない。結婚してもあまり穂高くんに対しての接し方は変わらずにいる。今更どう接したらいいかもわからなかったからこその『今まで通り』だった。
穂高くんは、会社では片想い設定のせいで私に話しかけることが多くなったけど、家では友達の延長線上みたいに接してくれてる。
昔から思っていた。割と居心地が良くて、一緒にいても気を遣わずにのんびりできる。
「穂高くんこそ、前と変わらずに私に接してくれるから…。」
「……」
「結婚したって言ってもなんか『友達から親友』みたいな関係に変わった感じで過ごしやすいよ」
同居と言ってもシェアハウスみたいな。
まったり過ごせる間柄だと思う。この先、深く考えずに楽に生きていけるような相手だからこそ、この結婚は間違いではなかったと信じたい。
「勢いで結婚したけど、その相手が穂高くんでよかった」
「……そっか」
それから私たちは注文を済ませて、運ばれてきた絶品イタリアン料理を堪能する。石窯で焼いたマルゲリータの生地は、ふっくらしていて噛めば噛むほど甘みを感じた。その甘みとトマトの酸味が絶妙にマッチする多幸感を感じさせるような味わいだった。