秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「……………かっ会社で李って呼ぶと色んな噂されそうだからボロが出ないように葉山って呼んでて欲しい…」
「んー、それもそっか。」
「会社内で結婚知ってるのは人事部長と総務の人だけでしょ…? ……勘繰られるのよくない」
名前を呼ばれるだけで緊張して汗が凄い。呼ばれ慣れてないわけじゃないけど、穂高くんの声で優しく呼ばれると思考がショートしそうになる。
「じゃあ葉山さ」
「っ…なに?」
動悸を落ち着かせるために何度も深呼吸をしていると、同じ目線になるように彼はしゃがんで私に話しかけた。
「一緒に朝食食べたいから食べるときに起こして欲しい。」
「……」
「寂しいじゃん。せっかく夫婦そろっての休日なんだし……」
拗ねたように顔を逸らして言うから、可愛らしく感じた。
「わかった」
了承すると、満足したような表情で穂高くんは食器を持って台所へと進む。そんな彼を止めるように先回りして、食器を受け取ろうと手を伸ばしたが、彼は私の横を素通りした。
「っ…洗い物、私する…!」
「……家事はお互いでするって契約したんだし、そんなに気遣わないで」
食器をシンクに置くと、その手が真っ直ぐ伸びてきて私の頭を撫でる。柔らかく彼の指が動くと、安堵感に包まれて何も言えなくなった。