秘密事項:同僚と勢いで結婚した


「わっ!私のりんご飴ー!」


バリっシャクっと、良い音を鳴らしながら…見せ付けるように。


「っ…大好物なのに!」

「あとで大きいの買ってやるよ」

「穂高くん知らないでしょ!食べ物の恨みが一番怖いんだよ!」

「ふっ…なにそれっ…はは!」


ほら、こうやって絡むのが一番楽しいじゃん。


友達の延長線上みたいなノリで、こんなふうに笑い合ってるのが一番だよ。


元カレと破局して、婚約破棄して、何もかもがどうでも良くなった。


プロポーズして、勢いで結婚して。


一番の男友達と夫婦になる自覚なんてなかったんだ。



だから…。



『だから』?



(…………私は穂高くんと、どんな関係になりたいんだろう?)



自分の心に質問を投げかけたと同時に、大輪の花が夜空に咲く。


《ドーン》


響く大きな音が鼓動を震わした。
ススキのように枝垂れる花火に照らされた夫の笑顔を見ると、私は胸にこみ上げる熱を感じた。


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