秘密事項:同僚と勢いで結婚した


小さなミニりんご飴を私に差し出し、穂高くんはニッコリと笑って言う。




「……人があまり来ないところで夫と…おしどり夫婦しませんか?」




甘いべっこう飴の味を堪能しようと、軽く齧り付いたところで耳元で囁かれた。


「っ……なに言って…」

「李の実家設定をここでも忠実に守ろうと思いまして」

「えっ…」

「恥ずかしそうにしてる李、割とツボかも」


穂高くんは余裕そうな表情で、私のべっこう飴を持つ手を包み込むように手のひらで覆った。


「ほだっ…」

「千智」

「……ちさ、と…」

「ふっ…辿々しすぎ」


笑いながら私の唇の横に穂高くんはキスをする。


「甘い…」


驚いて顔を覗くと、穂高くんは下唇を舌舐めずりした。


「っ……」

「なぁ、俺の気持ち…気付いてる?」


知ってるよ。

気付いてたよ。

敢えて気付かないフリして、今までの関係を壊さないようにしていたのに。


「………いつから…?」

「……内緒…」


私の追究を逃れるために、私のりんご飴を取り上げて、もぐもぐと食べ始めた。
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