秘密事項:同僚と勢いで結婚した

家に帰ると、穂高くんは冷やし中華を振る舞ってくれた。

調理中、彼には似合わない鼻歌なんて歌ってる。しかも曲選択は安易というか滑稽で『ハッピーバースデーソング』を永遠にリピートしていた。


「……穂高くんって可愛いところあるよね」

「…………可愛いは…なんか複雑…」


母性本能を擽るというか、年上からも好かれるようなタイプ。


(あ、でもこの間…年下に告白されてた)


要するに色んな人にモテるのか。なるほど。


なんてことは置いておいて。



「っ……冷やし中華おいし〜」

「手間いらずの料理で良かったのか…? せっかくの29歳の誕生日なのに」

「29かぁ。私も老いたなぁー。あと1年で三十路…!」


受け入れたくない現実。でも避けようのないこと。


「穂高くんの誕生日は…12月だっけ?」

「うん。クリスマス。」

「サンタさんから生まれてたりして?」

「……なんて突っ込めばいい?」


大したボケも揶揄いも浮かばないくらいに冷やし中華に無我夢中になる私を見て、彼はクスクスと笑っていた。
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