秘密事項:同僚と勢いで結婚した
「んっ…」
突然のキスに驚いて身をたじろぐ私を無視して、舌を挿れてくる。いやらしい水温が耳に響き、未だに慣れない穂高くんからの愛され方によって心臓をバクバクと打ち鳴らされた。
そして彼は私の左手に触れ、執拗に色んな場所を指先でなぞる。擽ったさを感じ、手を引っ込めようとするけれど手首を掴まれて阻止された。
「んん…」
「もっと口、開けて…?」
だんだんと意識が遠のくような感覚だった。きもちよくてふわふわする。とろける、骨抜きになる、という言葉が似つかわしい。
応えるように舌を出すと甘噛みされてピリピリとした甘い電流が身体中に駆け巡った。
「………よし…」
キスを終えると、彼がそう言う。
それを不思議に思った瞬間。
左手の薬指に光に反射するリングを見つけた。
「っ……これ…」
「………まだ渡せてなかったから…。」
穂高くんは真剣な表情で私の顔を覗き込む。逸らせない綺麗な瞳に吸い込まれるような感覚に陥って、私は唾液を飲んだ。
「……穂高李さん、この先もずっと…俺の奥さんでいてください…。」
「愛してます…」
こんなにも幸せでいいのかな。
堪えきれずに涙を流して、何度も笑顔で頷いた。
「生まれてきてくれて、ありがとう。これからもよろしく」
左手の結婚指輪に優しく触れながら『はい』と返事すると口角を上げて笑うから、どうしようもない愛しさでおかしくなりそうになった。