先生がいてくれるなら①【完】

私は美夜ちゃんに「行ってらっしゃい!」と手を振り、美夜ちゃんがそれに応えて手を振り返す。


美夜ちゃんは元気にテニス部の朝練へと走って行った。



美夜ちゃんはいつも私の心配をしてくれる。


テニス部を辞める事になった時も誰よりも私の心に寄り添ってくれたし、今だってそうだ。



そんな美夜ちゃんに全てを話す事が出来ない自分が、卑怯者のようにに思える。


私がただ藤野先生を好きなだけなら、こんな風に相手を隠す必要も無かったかも知れない。



でも、先生と私は──。



私はため息を一つついて、昇降口へと足を向けた。



先生がとても大切にしている部室を、私も大切に、大切に思って、掃除するために──。


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