先生がいてくれるなら①【完】
「ところで、今年の研究発表の展示だけど……」
部長の葉澤先輩が全員をぐるりと見回した。
「今年も例年通り、数学の公式や回答へのアプローチを各自まとめたものを模造紙に書き出して展示するんだけどさ。今年は立花さんもいるし、ちょっとお手伝いしてもらって、今年こそは綺麗な展示を目指そうと思う」
はて。綺麗な展示、とは?
「と言うわけで立花さん。ぜひ我々に力を貸して下さい!」
二・三年生に頭を下げられ、ポカンとする私。
と、事情の分かっていない一年生。
申し訳なさそうに頭を下げ続ける二・三年生の代わりに説明をしてくれたのは、顧問の藤野先生だった。
「つまりね、うちの部員は全員、揃いも揃ってみんな字が汚いわけ。悪いんだけど、模造紙に清書するのを手伝ってあげて」
「あー、なるほどそう言うことですか。──て言うか、この中で間違いなく一番字が綺麗なのって先生だと思うんですけど」
「文化祭は生徒が主体です。顧問は指導と監督だけ。と言うわけで宜しく」
「うわ、出た、丸投げ」
私が批判の声を上げると、先生は素知らぬ顔で「じゃあ後は任せた」と言って手をヒラヒラと振りながら部室を出て行ってしまった。
相変わらず適当すぎるでしょ、顧問のくせに。
まあいいや、先生がいない方が色々自由だし緊張しなくて済むし。