先生がいてくれるなら①【完】
光貴先生はお兄ちゃんの病室の前まで一緒に来てくれて、部屋の前で「やっぱり今日は帰ろうかな」とつぶやいた。
「立花さん。今日は僕が送って行きますから、少しゆっくりしても大丈夫ですよ」
「え?」
「僕が迎えに来るまでお兄さんの所で待ってて下さい」
「えっ、でも、光貴先生はお疲れですし、悪いです」
「大丈夫だから、送らせて下さい。どうせ僕も帰らなきゃいけないし。……ね?」
う。ずるいです、光貴先生。
そんな、小首を傾げてニッコリだなんて。
綺麗で格好良くて、大人の男性にこんな事言うのはあれだけど、ちょっと可愛い──。
私は赤くなりながら「はい……」と頷くしか無かった。