先生がいてくれるなら①【完】
「立花さんは文化祭、何かやるんですか?」
光貴先生に尋ねられ、私は一般客用に用意されているパンフレットを手渡した。
「私はこのステージと、2年5組のクラス模擬店と、あとは孝哉先生の数学研究同好会のお手伝いです」
「数学研究同好会……」
「はい。数研では、部員がそれぞれ研究内容を纏めたものを部室で展示発表するんです」
「面白そうですね。立花さんも部員なの?」
「私は名前だけです。数学は実は苦手で……」
「あらら、そうなんだ」
にっこり優しく笑う光貴先生を前に、私は恥ずかしくて顔を赤くして俯きながら歩いた。
「今日もお迎え、ちゃんとある?」
「あ……今日は先生には何も言って無くて。だからお兄ちゃんの顔だけ見て、すぐに帰ろうと思ってます」
まだ6時過ぎだし、少し話しても7時ぐらいに病室を出れば良いよね。