先生がいてくれるなら①【完】


私たちは再びリョウさんのお店に戻ってきた。


ユキさんに足を洗わせてもらい、お礼を言って帽子を返す。


「お散歩、どうだったー?」


借りたタオルで足を拭いていると、ユキさんがニコニコしながら私に尋ねた。



先生は一足先に2階のカフェに上がっていて、多分リョウさんと話をしているのだろう。


「海、気持ちよかったです。思ったよりもちょっと強い波が来て、もうちょっとで私だけずぶ濡れになる所でしたけど」


「……あらら、それはそれは」とユキさんが苦笑する。


「孝哉に何もされなかった~? いじめられてない?」

「だ、大丈夫です、いじめられたりはしてませんっ」


何もされたかったか、と聞かれて一瞬ドキリとする。


何もされてないけど……お店への帰り道の事を思いだして、少し複雑な気持ちになった。

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