異能者達の宴~夢の競演特別編~
乙女は小柄だ。

哲平の蹴りを受けて、大きく後方へと飛ばされる。

そこへ追い討ちをかけるように、哲平が火球を放つ!

まだ空中に浮かされたままの乙女。

回避は不可能だ。

為す術もなく火球の直撃を受ける!

「乙女!」

戦闘を見守っていた四門メグと修内太が声を上げる。

「つう…」

乙女は全身から白煙を上げながら、地面に片膝をついていた。

四門メグの強化の魔術を施されていなければ、今頃火球に焼き尽くされて黒炭と化していたかも知れぬ。

「……」

俺は、哲平と乙女の攻防を黙して見守っていた。

…いや、正確には違う。

見ていたのは哲平の後方の闇。

炎の明かりに反射して、何かが時折煌めいているのが見える。

恐らくは俺の眼にしか映らなかったであろう。

数々の戦を経験し、夜戦によって鍛え抜かれた俺の眼力。

それによってやっと視認する事が出来る。

それほどの『糸』だった。

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