Lunatic
Game
小河を千葉たちに任せ、瀬畑は職員室に急いだ。
職員室には校内放送のマイクがあり、スイッチを入れる。


「今からナイフを持った笹崎咲が校舎内に入ってくる!全力で逃げてくれ!」


詳しく説明する余裕なんてなかった。


しかし単刀直入に伝えられたそれを、ほとんどの生徒は真剣に受け取らなかった。


笹崎咲って誰だ?
めちゃくちゃ美しい人でしょ。
あの笹崎さんがなんでナイフ?
高校生にもなって、変な嘘つかないでほしい。
こんな冗談、笑えねえ。


校内に足を踏み入れた咲は、放送と生徒たちの声を聞いて、気持ちが高ぶってきた。


瀬畑の言うことを信じずにいる生徒たちの前に、本当に刃物を持って現れたら、どんな反応をしてくれるだろう。


想像しただけで楽しくなる。


そして咲は自分のクラスのドアを開けた。
ナイフを確認できる生徒たちが、悲鳴を上げて机にぶつかりながら、咲から離れる。


それを聞いて、他の生徒たちも教室の隅に逃げる。


「あの放送、嘘じゃなかったのかよ!」
「どういうこと!?」
「なんでナイフなんか持ってるの!?」


騒がしい彼らを見て、頬が緩んで仕方ない。


怯えた声を聞くのも、楽しいとわかった咲は、人の塊に向かって歩く。
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