Lunatic
端から教室の外に出ていく。
逃げ遅れた女子生徒は、恐怖で声が出なくなっていた。
目に涙を浮かべるさまに、興奮する。


「一人目──」


彼女の足にナイフを当てようと手を伸ばしたが、刃は彼女には届かなかった。


あと僅かというところで、瀬畑が咲の手首を掴んで止めたせいだ。


「……邪魔しないで」


咲の視線は鋭く、女子生徒の頬には涙が伝う。


「あんたの思い通りにはさせない!」


瀬畑と咲が睨み合っている間に、女子生徒は逃げ出す。


ゲームをしたい咲は、すぐに瀬畑に背を向ける。
まだ教室に残っている生徒に向かって歩く。


「嫌だ、来ないでよ!」
「ふざけんな!」


なかなか出られない生徒たちが泣き叫ぶ。
それを聞いて咲はさらに口角を上げる。


だけど、瀬畑が手首を掴んで引き止める。


「……しつこい男は嫌われるわよ」


咲は瀬畑に顔を近付ける。
妖艶な笑みに気を取られてしまった瀬畑は、自分の腕が切られていることに気付くのが遅れた。


痛みのあまり、瀬畑は咲から手を離す。


「次邪魔をしたら、殺すわ」


傷を押さえ血だらけになっていく瀬畑の手を見て、咲は笑う。


そして教室をあとにした。
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