Lunatic

野田と小河の顔色が悪くなっていく。


「呪い、あるじゃないですか！」
「いや、あるわけねえだろ」


初めに冗談を言った千葉の兄が、取り乱す小河に冷静に言った。


「なんて言われたって言ってたか？」


兄は瀬畑のほうを見る。


「たしか……宮村が深く刺そうとしたとき、間違ってるって言われたような気がした……と」
「だったら、自分と同じような生徒を見逃せなかったんだろ。憶測だけどな」


小河は納得したような、していないような、複雑な表情を見せる。


「さっきも言ったが、こいつがこうなったのは呪いじゃなくて女子高生に刺されたから。目を覚まさないのは、こいつの体が弱いから」
「……なに、悪口言ってんだよ」


兄の言葉に答えたのは、眠っていたはずの千葉だった。


「千葉！」
「もう起きないと思った……」
「びっくりさせんなよ」


三人は立て続けに言葉をかける。


「悪い」


千葉は笑顔を返す。
そんな四人を見て、兄は微笑んでいた。


そして検査が終わり、事件の結末を聞いた千葉は、唖然とした。


「笹崎さんが、死んだ……」


空気が重くなる。
それを壊すように、千葉の兄が手を叩いた。


「弟が目を覚ましたってのに暗いぞ、お前ら」