記憶シュレッダー
「そ、それよりさ、叔父ちゃんの話をもっと聞かせてよ」
「そうね。敦子ちゃんが生まれる前のお父さんは、嫌なことをどんどん忘れられる人だったのよ」
話しを変えようと思ったのに、また伯母さんから気になる言葉が出てきた。
「嫌なことを忘れるって?」
「そうよ。財布を無くしたり、大事な商談に遅刻してしまったことなんか、全部忘れてケロッとしてるの。思えばあれも、友達が亡くなった後から始まったと思うわ。やっぱりショックで、心に病気があったのかもしれないわね」
伯母さんはそう言い、目尻に浮かんできた涙をぬぐった。
なにも知らない人なら、きっとそう思うことだろう。
友達の死のショックで物忘れが激しくなったのだと。
だけどそれは違うと、あたしはもうわかっていた。
お祖父ちゃんは友達が亡くなった後も何度もシュレッダーを使っていたのだ。
「そうね。敦子ちゃんが生まれる前のお父さんは、嫌なことをどんどん忘れられる人だったのよ」
話しを変えようと思ったのに、また伯母さんから気になる言葉が出てきた。
「嫌なことを忘れるって?」
「そうよ。財布を無くしたり、大事な商談に遅刻してしまったことなんか、全部忘れてケロッとしてるの。思えばあれも、友達が亡くなった後から始まったと思うわ。やっぱりショックで、心に病気があったのかもしれないわね」
伯母さんはそう言い、目尻に浮かんできた涙をぬぐった。
なにも知らない人なら、きっとそう思うことだろう。
友達の死のショックで物忘れが激しくなったのだと。
だけどそれは違うと、あたしはもうわかっていた。
お祖父ちゃんは友達が亡くなった後も何度もシュレッダーを使っていたのだ。