記憶シュレッダー
財布を無くしたとか、遅刻したとか、小さな出来事も全部消してしまってきたのだ。


その事実に全身が寒くなるのを感じた。


あたしはどうなんだろう?


お祖父ちゃんの容態が変化していることをシュレッダーにかけてしまっていたけれど、他に忘れてしまったことがあるんじゃないだろうか?


思い出したいと思う反面、怖くてなにも思い出したくないと感じてしまう。


「それにしても、この部屋なんか臭くない?」


伯母さんの言葉にあたしは首をかしげた。


「そうですか?」


由香里たちが来たときにごみ箱の掃除はしてあるけれど、換気などをしていないから匂いがこもっているのだろう。


そう思い、あたしは窓を開けた。


その下には布がかけられたシュレッダーがある。


あたしはなるべくそれを見ないようにした。
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