記憶シュレッダー
希望校は由香里と同じ高校で、合格は難しい。


これが、あたしに降りかかっていた本当の出来事だったみたいだ。


その紙を見ても、あたしの記憶は読みがえってこなかった。


いくら紙を復元しても、記憶までは戻らないみたいだ。


その後も復元を続けていると、真っ赤な紙に『お祖父ちゃんの容態が悪化した』と書かれていた。


あたしはゆるゆると息を吐き出す。


本当にこんなことを書いてシュレッダーにかけていたなんて、思っていなかった。


あたしは復元した紙を手の中でグチャグチャに丸めて、ごみ箱へ捨てた。


あたしはちゃんと記憶を持っていれば、もっとお見舞いに行くことができた。


もっとお祖父ちゃんのそばにいてあげることができたはずだ!


悔しくて涙が滲んできた。


1度落ち着くためにリビングへ向かうと、外はもう真っ暗だ。


たった2枚の紙を復元するだけで、何時間もかかってしまったみたいだ。
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