記憶シュレッダー
この調子だと、やっぱり全部の紙をつなぎ合わせることは不可能かもしれない。


由香里や蒔絵なら手伝ってくれそうだけれど、自分が忘れてしまったことを2人に教えることは憚られた。


「あ~あ……やってらんない」


不意に、そんな声が聞こえてきて振り向いた。


しかし、そこには誰もいない。


それに今の声はあたしのものだったような気がする。


「孫は受験生だっていうのに、このタイミングで死ぬとかある?」


それは確実に、あたしの脳内に響渡っていた。


あたしは咄嗟に耳を塞いてその場にしゃがみこんだ。


これは一体どういうこと?


どうして自分の声が聞こえてくるの?


わけがわからず、体が小刻みに震え始める。
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